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ここ数年、「タワマン・クライシス」などと言って、タワーマンションの心配ごとが取りざたされています。
極端な話になると「タワーマンションの将来は廃墟!」なんて噂もあります。
確かに、あれほど巨大なマンションが老朽化した時の空室リスクや修繕費用の調達困難なんて話はもっともらしく聞こえるものです。
単なるひがみや誹謗中傷と見過ごせない部分があるのは確かでしょう。
そこで、これからタワーマンションを購入して「ちょっとセレブな生活を!」と夢見ている方々や、既にタワーマンションを購入してお住まいの方々は、タワマン・クライシスについてしっかりと検証しておくのは重要です。
こちらを最後までお読みいただければ、「タワマン・クライシス」に陥らないためのヒントを得ることができます。
INDEX
⒈タワマン・クライシスについて
⒈タワマン・クライシスとは?
横浜のみなとみらいなど湾岸沿いには、外観を見てもちょっと古くなってきたと分かるタワーマンションがちらほらありますよね。
いくつかピックアップしてみますと、「オルトヨコハマビューポリス」は2000年11月完成、「MMタワーズ(イースト、ウエスト、サウス)」は2003年10月、「横浜シティタワー馬車道」で2003年3月、「エクステ山下公園クレイドルタワー」が2001年5月と、築20年のタワーマンションが増えてきていますね。
どれも素晴らしいマンションですが、実は、タワーマンションの場合、この築年数の経過によって問題が大きくなるという話があるんですよね。
タワマン・クライシスとは、文字通り「タワーマンションの危機」という意味で、存在そのものの危機とか、マンション価値の低下リスクのことを指しています。
⒉タワマン・クライシスの原因とは?
大規模修繕工事費が巨額
その主な原因となるのが、巨額の費用を必要とする大規模修繕工事です。
地上60m以上の超高層ビルの修繕工事はとにかく費用がかさみます。
特に外観の修繕は、作業用の移動昇降式の足場を組んだりゴンドラを設置したりだけでも大仕事なんですよね。
建築資材や作業機械・工事道具を上階へ搬入するのも一苦労になります。
5階建てや10階建てのビルの修繕工事とは比べ物にならないほど、費用と手間がかかるわけですね。
その費用も莫大であり、住民が負担する修繕積立金もかなりの額になってきます。
もちろん、その費用を承知したうえで、支払い可能な方がオーナーになっているはずですし、戸数の多いタワーマンションですから過剰に心配する必要はないとの見解が、ちらほらとありますが、ことはそれほど単純ではありません。
大規模修繕の実例が少ない
実例が少ない点も原因の一つですね。
一般的なマンションの場合は、まず築12年あたりではじめの大規模修繕を行うのが望ましいとされていますが、タワーマンションの場合は修繕計画の難易度が高い。
また、西暦1980年ぐらいから建て始められたタワーマンションですから、これまでに大規模修繕工事の実例が非常に少ないという問題ですね。
具体的な修繕工事の方法も不完全(非効率的なレベル)でしょうし、費用についても決して明確ではありません。
管理会社・管理組合の修繕計画プランが曖昧
こちらも大きな原因の1つです。
やってみないとわからないという部分もあって、初めに計画していた修繕工事プランが曖昧だったり、甘い計画で費用不足になったりする可能性が高いとも危惧されていますね。
また、マンション共通のお悩みの1つですが、オーナーの中には積立金を未納にしているケースも少なくありません。
修繕積立金が安い
タワーマンションに限った事ではないのですが、マンション販売を促進するために、わざと修繕費用積立金を低く設定して販売していた経緯があります。
ただでさえ高いマンションをローンで購入する人にとって、その上に大きな修繕費用を負担するのはとても酷ですよね。
それでは販売が滞るかもしれないと、わざと修繕費用を安く見積もっていた事実があるんですね。
ちょっと詐欺のような話ですが、ちゃんと合法の範囲で行っていました。
ですが、築10年・20年と経過して、いよいよ修繕工事をする段階になると、全く費用が足らないという事態があちこちで発生しました。
それで、オーナーたちは自前で追加費用を負担し、何とか修繕してもらったという話は珍しくありませんよね。
もちろん合法の範囲での見積もりですから、管理会社などに損害倍書をすることも難しいでしょう。
初期のタワーマンションでも、このように修繕プランの見積もりが低い設定になっているケースがありました。
このように、タワーマンションの安全性・居住性・資産価値を決定する修繕工事プランがままならないという不安や心配が、タワマン・クライシスとされているんですよね。
⒉約8割のタワーマンションが修繕積立金不足に陥る?
建物の階数/建築延床面積 | 平均値 | 事例の3分の2が包含される幅 | |
---|---|---|---|
●15階未満 | 5,000㎡未満 | 218円/㎡・月 | 165円~250円/㎡・月 |
5,000~10,000㎡ | 202円/㎡・月 | 140円~265円/㎡・月 | |
10,000㎡以上 | 178円/㎡・月 | 135円~220円/㎡・月 | |
●20階以上 | 206円/㎡・月 | 170円~245円/㎡・月 |
参考:国土交通省「「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要」 を基にカナタワ運営事務局が作成
※ここで示す「修繕積立金の額の目安」は、
1.主として区分所有者が自ら居住する住居専用の単棟型のマンションを対象に、
2.長期修繕計画作成ガイドライン(平成20年6月国土交通省策定)に概ね沿って作成された長期修繕計画の事例(84事例)を収集・分析し、
3.新築時から30年間に必要な修繕工事費の総額を当該期間で均等に積み立てる方式(均等積立方式)による月額として示したものです。
国交省ガイドラインとは?
上の表の通り、タワーマンションを含むマンションビルの修繕費用に関して、国土交通省がガイドラインを発表しています。
これからタワーマンションの購入を考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
20階建て以上のマンションでは、新築からの30年間に必要な『均等積立方式の積立金は平米単価が170~245円』というものがあります。
しかし、首都圏の約8割のタワーマンションの修繕積立金は、国交省の目安を下回っているのが現状です。
これでは、タワマン・クライシス一直線です。
国交省ガイドラインの注意点とは?
国交省のガイドラインで注視すべきは、公表している単価は、新築からの30年間に必要な単価との点でしょう。
1度目の大規模修繕工事では費用が賄えたけど、2度目、3度目の工事となると給排水管の取替や、超高速エレベーターの交換などの必要性が高くなるため、果たして体力が持つのであろうか?
銀行融資を頼りに乗り切るのか?
と不安気な発言を耳にします。
また、2020年6月に東京都新宿区は、区内のタワーマンションを対象に実態調査結果を公表しました。
新宿区が公表したアンケート結果とは?
アンケート結果では、約4割の管理組合が今後の修繕積立金について「足りない」と回答したそうです。
新宿区内のタワーマンション(※定義を20階建て以上と設定)では約6割が修繕積立金の値上げをしたが、「足りている」との回答はうち1割のみだったそう。
因みにアンケートの回収率は100%、築年数については23年以上が5棟、築13年~22年のマンションが16棟との事です。
ただし、近年のタワーマンションは修繕費用見積もりを丁寧に行うように徹底していますね。
修繕費用の不足をある程度回避するために、今では購入時に一定額の修繕費用基金を収めるようにしているところが多いです。
加えて毎月の積立金も回収し、5年・10年ごとに積立金の見直しを行うとか、一時金を集めるなどして、大規模修繕が無事に完了するよう備えていますね。
このように、やり方次第ではタワーマンションの修繕費用が見積もり内で完成するとされていますね。
反対に、管理会社や組織の計画や取り組みが甘いと、タワマン・クライシスが現実のものとなる可能性があると言えます。
毎月お支払いしている修繕積立金や管理費はいったい何に使われているのでしょうか?そして、その積み立てられたお金は、どんな計画に基づいて何に使われていくのでしょうか?修繕積立金の性質やマンション管理に関してを学ぶこと[…]
⒊タワマン・クライシスは本当に起こるのか?
ここまでお読みになって頂ければご理解いただけるかと思います。
従って結論を先に言いますと、マンションの運営管理の状態によっては、クライシスが本当になる可能性があるのです。
確かに、一部のマスコミはわざとタワマン・クライシスを声高にあおって、一般大衆へ吹聴しているきらいがありますね。
富裕層が大損するシーンを連想させ、大衆心理に迎合するようなニュースを流す場面も多々見られます。
また、力のある個人のアフィリエイターやアフィリエイト専門の法人が、マンションの売却査定を促すために、執拗にクライシスをあおる傾向も往々にして見受けられます。
しかし、これまでの経験と実績を積み上げてきたデベロッパーが本腰を入れて建設するタワーマンションで、修繕工事プランも踏まえた実現性の高いプランを提供しているところに関しては、いわゆるタワマン・クライシスが発生するリスクは低いと言えるでしょう。
現に野村不動産㈱のマンションシリーズ「オハナ」では、新築時からの修繕積立金を敢えて高めに設定するケースなどもあります。
また、管理組合と管理会社がマンションの資産価値を維持することをゴールに見据え、確かな連携が取れているケースであれば、タワマン・クライシスに陥るリスクは低いと言えるでしょう。
反対に、手探り状態で建設・販売された過去のタワーマンションの中には、管理会社や管理組合の甘い読みによって費用面で苦境に立たされている事実もあります。
⒋「タワーマンション」大規模修繕の難易度3選とは?
⒈オーダーメイドな修繕工事
タワーマンションの修繕工事はオーダーメイドです。
タワーマンションはプレミアム感・セレブ感を出すために個性的な特別な建物形状と個性的な内部構造にすることが多く、修繕工事プランがオーダーメイドになってしまうという難点があります。
そのために、一般的な建設会社は対応できず、施工元のゼネコンに依頼しなければならず、コストも高くなる傾向があります。
また一斉に建築されたタワーマンションの大規模修繕工事サイクルを15年と考えると工事の時期がバッティングしてしまう可能性も高いことから、作業にかかわる人員の確保が困難とも言われていますね。
⒉特殊な工事が必要
下層階は特殊な足場・高層階はクレーンやゴンドラと工事難易度が高い点は否めません。
高層階ともなれば、足場だけでは対応できないため、ゴンドラ・クレーンなどの利用で作業難易度が高まります。
修繕工事費を大きく圧迫する足場費用とゴンドラなどを利用する場合の費用は、マンションの形状によっては屋上から吊り下げて昇降させるゴンドラなどを利用したほうがリーズナブルとなる場合もあります。
しかし、気象の影響を受けやすく時間のロスが懸念されるところが1つのマイナス点。
2つ目のマイナス点としては、上述の通り作業できる人材が少ないとの部分になります。
⒊意見が一致しにくい
オーナーの世帯数が多いので意見が一致しにくい点もありますね。
ご承知の通り、一棟1,000戸以上の世帯が入るタワーマンションもあります。
大規模修繕工事は、2002年の法改正により4分の3の議決権者の同意から、規約の変更により過半数以上の賛成により可能となりましたが、世帯数が非常に多いタワーマンションではいろいろな意見が出るため、工事計画や実施が困難となりやすいです。
⒋劣化診断が困難
建物の劣化診断の難易度が高いところも懸念材料ですね。
また、低階層と高階層との劣化状況は異なるものでして、外壁などはドローンや望遠鏡を用いて調査を行うケースもあります。
地下ピットやエレベーターのシャフト、外壁など、立ち入りが困難な箇所も多く、ドローンや望遠鏡を用いて調査を行うケースもあり、多額の費用が必要となります。
⒌「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」の50年安心戦略とは?
勝ち組タワーマンションのモデルケース
『日本で最も住みたい街』トップランクの武蔵小杉にあることで人気の高いタワーマンション「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」。
こちらのマンションが掲げる『MST50年安心戦略』は、勝ち組と負け組とに2極化すると言われているタワーマンションの将来においては、大変参考になる事例の1つです。
先ずはじめに当マンションは、現状の修繕費用などの現状と、今後の物価スライドも考慮して費用設定を見直しました。
その結果、修繕積立金の平米単価を世間一般並の216円にして、中途の一時金なく、今後50年間は修繕積立金の変更が不要になる。
そして50年間、常時2億円以上を確保するというものをつくりだしました。
なお、管理組合では活動のテーマ・五箇条を掲げていて、こちらもなるほどと感心させられました。
その内容を簡潔すると、『建物のライフサイクルを通じて安心の資金水準を設定し、あやふやな皮算用はしないこと、費用確保を後回しにせず、引き上げも極力1回だけにして、売買では両者が公平に修繕費を負担し、タワーマンションの競争激化に勝ち残るため、MST50年安心戦略の有効性を市場でアピールする』というものです。
勝ち組のタワーマンションも当初は赤字経営だった
しかし、当初の「パークシティ武蔵小杉」の財政状態の一般会計は6%の赤字であり、修繕積立金に関しては10年後には3倍、20年後には5倍になるといった長期修繕計画であったようです。
ここに懸念を感じた住民有志は、財政の抜本的な見直しを決意し、2年目、3年目に大幅な経費削減を実現したことで、年間3,500万円もの支出削減に成功しました。
主には、委託している管理費や外注契約費の節減等々ということになります。
こちらの節減までの折衝は、とうぜんに長期に亘るものであったと言われています。
また、分譲会社による2年のアフターサービス期間が切れる前に、有名なインスペクション会社である㈱さくら事務所に建物検査(インスペクション)を依頼したことで、約1億3,000万円相当の無償修繕まで実現させたそうです。
建物検査費用に約4,000万円の支出があったようですが、数字上はかなりの便益ですよね。
また驚くべきは、大規模修繕の度に自動的に設備や機器を取り換える一般的な修繕の考え方を改革。
日常の修理と大規模修繕とを分けない「状態監視型」を目指しました。
実績の1つとしては、例えば3,000万円と見積りされていたポンプ機械の入れ替え費用を精査した結果、パーツ交換の80万円で足りたという類のものです。
例えば、3度目の大規模修繕の時期に必要になりますでしょうか?タワーマンションの高速エレベーターは、特注品のため交換となると莫大な費用がかかります。
こういった事態の備えとして「状態監視型」を目指すことにより大きな無駄を省くという考え方です。
また、年間1億円を超える修繕積立金に関しても国公債などを中心とした安全なポートフォリオにて運用。
単年500万円の運用益を出しているようです。
なお、管理組合は、理事14名と監事2名で構成されており任期は2年との事。
理事を断るには「理事会協力金」と言う名目で任期分の管理費の50%を徴収する体制を取っているようです。
ここでは伝えきれないほどですが、完全に勝ち組のタワーマンションと言えるでしょう。
<参考文献>
⒍タワーマンション「エルザタワー55」大規模修繕の事例
タワーマンションの大規模修繕工事の成功例として、日本一複雑な形状をした埼玉の「エルザタワー55」があります。
55階建ての超高層マンションでありながら、上部・中間部・下部の形が異なっていて、修繕工事がやりにくいとされていました。
しかし、2015年・2016年の2年がかりでゴンドラを使った大規模修繕を実施しています。
費用面では、優秀なコンサルタント会社のサポートで修繕積立金の範囲内で済んだ(追加金もなし)と言われています。
具体的には、「エルザタワー55」では総額12億円(1戸あたり185万円の負担)をかけて大規模修繕工事を完成させました。
国内では初のタワーマンションの大規模修繕工事として、いろいろな意味でお手本とされています。
成功の理由には、コンサルでは緻密な建物診断を行い、必要最小限の修繕工事にまとめ上げたということがあります。
なお、請負業者も厳選し、無駄なコストを徹底排除したことも成功の理由だと言われています。
しかし、2021年3月時点での「エルザタワー55」の修繕積立金は㎡あたり125円/月額となっています。
この単価は、国交省の推奨する単価をかなり下回る水準です。
「エルザタワー55」の一度目の大規模修繕工事は、成功例として取り上げられることが多い昨今ですが、この工事により積み立ててきた修繕金をほぼ吐き出したとも聞いております。
従って一部では、本当に成功事例なのか?と懐疑的な意見も見受けられます。
しかし乍ら、参考にできる事例があるだけでも有難いお話ですよね。
「エルザタワー55」の修繕積立金の額については、懸念されている2回目の大規模修繕工事に備えて、そしてマンションの資産価値を保ち続けていくために、今後も段階的に徴収額を増やしていくのだと考えられます。
⒎まとめ
いかがでしたか。
タワマン・クライシスに陥らないヒントを得ることが出来たのではないでしょうか。
特に武蔵小杉のタワーマンション「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」の事例は、住民有志のマンションへの愛情と情熱が、現在においても新たな価値を生み出し続けている素晴らしい事例ですね。
タワーマンションも適切なメンテナンスが実施されれば100年以上はもつものが多いとされていますからね。
皆様には修繕積立金が安いから良いという観点ではなく、修繕積立金はマンションの価値を守ってくれる活きたお金なんだという部分をどうかご理解いただけると幸いです。
マンション管理のレベルをチェックするには、この修繕積立金のレベルが充分確保されているかどうか?
修繕工事プランがしっかり作られているかどうか?にかかっていると断言できますからね。
維持管理が丁寧で、管理組合が自らホームページを公開し、最新情報を更新しているタワーマンションであれば、居住性の維持・資産価値の維持が期待できるはずですよ。
今後の都心での生活は、タワーマンションや超高層ビルを中心に、集約的にまとまった利便性の高い生活空間・経済エリアを、より構築するようになるでしょう。
従いまして、当コンテンツがタワーマンションや超高層ビルの資産価値の向上の一助となることを願っております。
この度も最後までお読みいただきまして有難うございました。
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